胃・十二指腸潰瘍は、治療しないで放っておくとどうなるの?
胃潰瘍・十二指腸潰瘍に気づくのが遅れたり、治療をきちんと行わなかった場合、潰瘍から出血が起こったり、穿孔(胃に穴が開くこと)や腹膜炎を起こすことがあります。
そもそも潰瘍なのに気づかない人がいるの?と質問を受けますが、これはしばしばあることです。先に述べた痛み止めが原因で潰瘍になっている場合は、痛みを感じずに、突然吐血などを起こしてしまう場合があるのです。以下に、潰瘍を放置した場合の症状の説明をします。
①潰瘍によって血管が傷つくと出血が起こり、吐血や下血が起こることがあります。
吐血とは、胃や十二指腸の病変からの出血を口から吐くことですが、吐き出される血は、胃酸によって血液が参加されて、黒っぽい色に変色しています。大量の出血が続いている場合には、鮮血を吐くこともありますが、この場合は食道の病気(食道静脈瘤の破裂、マロリー・ワイス症候群など)で出血している可能性もあります。
吐血がひどい場合には、血圧が下がって立ちくらみ、めまい、ふらつきがしたり、動悸が起こったりすることもあります。
下血とは、便に血液が混ざることですが、こちらも血液は黒く変色し、タール状の便になります。下血は、胃がんや大腸がんが原因となって起こることもあるので、症状がみられた時はなるべく早く検査を受ける必要があります。
②潰瘍の状態が悪くなると、胃や十二指腸の壁に完全に穴が開いた「穿孔」という状態になることがあります。胃潰瘍に比べて壁の薄い十二指腸潰瘍のほうが穿孔を起こしやすく、穿孔を起こした方の70%程度は十二指腸潰瘍の患者さんであるといわれています。
穿孔が起こると、腹部全体の激しい痛みと、出血やおう吐が起こります。穿孔をすぐに治療しないと重い腹膜炎が起こるため、多くの場合、手術が必要となります。
③胃潰瘍・十二指腸潰瘍で穿孔が起こると、胃の内容物が胃の周囲にあふれだし、腹膜が胃酸などで刺激され、腹膜炎が起こります。
腹膜炎の特徴的な症状は、突然起こる激しい腹痛です。腹膜の一部に腹膜炎が起こると腹部の一部が、腹膜全体に起こると腹部全体が痛みます。この他、吐き気・おう吐、頻脈などの症状が起こることもあり、さらに症状が進むと、ショック状態になり、命の危険もある状態となります。腹膜炎が起きた場合は、入院治療の上、緊急手術が必要です。