2021.04.05更新

胃・十二指腸潰瘍

胃潰瘍・十二指腸潰瘍ってどんな病気でしょうか?

胃や十二指腸の内側(粘膜)は、強い酸性の胃酸や消化酵素を含む胃液にさらされているため、胃液によって粘膜が傷つかないようにするための仕組みを持っています。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、ピロリ菌、非ステロイド性抗炎症薬などにより、この防御機構が傷害されて粘膜が傷つき、そこが胃液の攻撃にさらされることで、胃や十二指腸の粘膜や組織の一部がなくなる病気です。

 

胃・十二指腸潰瘍になるとどうなるの?

①上腹部の持続的な痛み

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の症状として、最もよくみられるのが痛みです。上腹部やみぞおちに、鈍く持続的な痛みが多くみられます。胃潰瘍の場合は、食後に痛みを感じることが多いと言われますが、これは胃に入った食べ物が潰瘍を刺激して痛みが起こるためです。

十二指腸潰瘍の場合は、空腹時に痛みが起こり、食事をとると痛みが治まるのが特徴ですが、これは胃酸が潰瘍を刺激して痛みが起こるためです。

なかには潰瘍があっても全く痛みを感じない患者さんもいるため、痛みがあるかどうかや、痛みの強さだけでは潰瘍の程度を判断することはできません。

②胸やけ

胸のあたりに焼けるような不快な感じがする胸やけが起こります。また、酸っぱい液体が口まで上がってきてゲップが出る「呑酸(どんさん)」という症状が現れることもよくあります。このような症状が起こるのは、胃酸の出すぎや、胃の運動が悪くなったり、胃から十二指腸に続く幽門や十二指腸が狭くなって、胃に長時間食べ物が残ることで食道に胃酸が逆流するためです。

③食欲不振

胃潰瘍の患者さんでは、食べ物が胃に長時間残ることなどによって、食欲不振を感じることがあります。吐き気やおう吐などの症状が起こることもあります。

④膨満感

胃潰瘍の患者さんでは、胃酸の分泌が低くなることがあり、腸管内でのガスの発生が増えたり、腸の運動が鈍くなったりして、おなかが張った感じが起こりやすくなります。

病気の程度が悪くなると、その部分から出血して吐血や下血(便に血液が出ること)、穿孔(胃・十二指腸に穴があくこと)、腹膜炎などの症状が起こったりします。

 

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因は?

胃潰瘍は、主として胃粘膜の防御が弱まることで起こります。ピロリ菌感染、薬やストレスにより防御機構が弱まって胃粘膜に傷ができ、それが潰瘍に進みます。

十二指腸潰瘍は、胃酸の分泌が高くなり、それが胃酸の攻撃に対する抵抗力が弱い十二指腸の粘膜を傷つけて起こります。ピロリ菌感染も十二指腸の粘膜を弱めます。また、脂肪分の多い食事などが、胃酸の分泌を増やします。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因として最も多いのはピロリ菌感染で、次いで非ステロイド性抗炎症薬です。ストレスでも胃酸の量が増えると言われています。胃酸はどの原因が関係する場合でも、胃粘膜の傷の修復を妨げ、潰瘍を悪くします。

一般に、日本人には胃潰瘍が多く、欧米人には十二指腸潰瘍が多いと言われています。

 

胃潰瘍、十二指腸潰瘍の検査は、何をしたらいいの?

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の診断は、問診、触診、バリウム造影検査、内視鏡検査などにより行われます。ピロリ菌に感染している可能性がある時には、ピロリ菌検査を行います。胃の組織検査を行って、がんと潰瘍の区別をすることもあります。こうした検査は、診断だけでなく、治療の効果をみるためにも行われます。

その他に、血液検査、超音波検査などで、すい臓の病気や胆石、虫垂炎などの他の病気と区別したりします。

 

①内視鏡検査

細い管に超小型カメラがついた内視鏡を口もしくは鼻から入れ、モニターで胃や十二指腸の状態を確認する検査です。潰瘍の進行度や深さの診断、他の病気との区別ができます。同時に、検査のために組織をとったり、出血を止めるための処置などを行うこともあります。内視鏡検査の時に潰瘍部分の組織を採取し、調べる検査です。採取する組織の大きさは1mm角ほどで、痛みはありません。この検査によって、病変が胃潰瘍か胃がんかを区別できます。


②ピロリ菌検査

胃潰瘍、十二指腸潰瘍の治療方針を決めるために欠かせない検査です。ピロリ菌の検査方法はいくつかあり、内視鏡検査の時に胃粘膜組織を採取したり、血液、尿、便、吐く息の中にピロリ菌に関係した物質があるかどうかを調べたりすることで確認ができます。詳しくはピロリ菌のページにも記載していますのでご確認ください。


③バリウム造影検査

バリウムを飲んでレントゲン写真をとる検査です。潰瘍の部分にバリウムが入り込み、胃や十二指腸の内壁から突き出たように写るため、どこに潰瘍があるかを確認することができます。先ほど述べたとおりがんと区別するためには、生検を行い、顕微鏡の検査をした方が良いので、当院では初めから内視鏡の検査をお勧めしています。

ペプシノゲン検査

他の市区町村でABC検査を受診された方も、当院で苦痛の少ない内視鏡検査(精密検査・2次検査)も受けていただけます。

 

胃・十二指腸潰瘍は、治療しないで放っておくとどうなるの?

胃潰瘍・十二指腸潰瘍に気づくのが遅れたり、治療をきちんと行わなかった場合、潰瘍から出血が起こったり、穿孔(胃に穴が開くこと)や腹膜炎を起こすことがあります。

そもそも潰瘍なのに気づかない人がいるの?と質問を受けますが、これはしばしばあることです。先に述べた痛み止めが原因で潰瘍になっている場合は、痛みを感じずに、突然吐血などを起こしてしまう場合があるのです。以下に、潰瘍を放置した場合の症状の説明をします。


①潰瘍によって血管が傷つくと出血が起こり、吐血や下血が起こることがあります。

吐血とは、胃や十二指腸の病変からの出血を口から吐くことですが、吐き出される血は、胃酸によって血液が参加されて、黒っぽい色に変色しています。大量の出血が続いている場合には、鮮血を吐くこともありますが、この場合は食道の病気(食道静脈瘤の破裂、マロリー・ワイス症候群など)で出血している可能性もあります。

吐血がひどい場合には、血圧が下がって立ちくらみ、めまい、ふらつきがしたり、動悸が起こったりすることもあります。

下血とは、便に血液が混ざることですが、こちらも血液は黒く変色し、タール状の便になります。下血は、胃がんや大腸がんが原因となって起こることもあるので、症状がみられた時はなるべく早く検査を受ける必要があります。


②潰瘍の状態が悪くなると、胃や十二指腸の壁に完全に穴が開いた「穿孔」という状態になることがあります。
胃潰瘍に比べて壁の薄い十二指腸潰瘍のほうが穿孔を起こしやすく、穿孔を起こした方の70%程度は十二指腸潰瘍の患者さんであるといわれています。

穿孔が起こると、腹部全体の激しい痛みと、出血やおう吐が起こります。穿孔をすぐに治療しないと重い腹膜炎が起こるため、多くの場合、手術が必要となります。

 

③胃潰瘍・十二指腸潰瘍で穿孔が起こると、胃の内容物が胃の周囲にあふれだし、腹膜が胃酸などで刺激され、腹膜炎が起こります。

腹膜炎の特徴的な症状は、突然起こる激しい腹痛です。腹膜の一部に腹膜炎が起こると腹部の一部が、腹膜全体に起こると腹部全体が痛みます。この他、吐き気・おう吐、頻脈などの症状が起こることもあり、さらに症状が進むと、ショック状態になり、命の危険もある状態となります。腹膜炎が起きた場合は、入院治療の上、緊急手術が必要です。

胃潰瘍と似ている胃がんがあります。

胃がんの中には、肉眼で見ると胃潰瘍のように見えるものがあります。病変の場所や形などで、医師はある程度は判別できますが、完全に確定できるわけではありません。そのため、内視鏡検査で潰瘍が見つかった場合、顕微鏡で組織を見ることで、がん細胞の有無を診断する場合があります。

また、潰瘍と診断された場合でも、がんを完全に否定する目的で数ヵ月後に再検査(内視鏡)が行われる場合があります。採取した組織の中にたまたま、がん細胞がない場合があるからです。なかなか治らない胃潰瘍があれば、胃がんに注意すべきでしょう。

 

 

胃・十二指腸潰瘍の治療方法は?

胃内の「防御因子」と「攻撃因子」間のバランスの崩れを元の状態に戻すことが、治療の基本です。ストレスやアルコールの過飲、薬剤などが原因であることがはっきりしていれば、その原因を取り除き、併せて内服薬を処方します。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療薬には、胃酸分泌抑制薬や胃粘膜保護薬などがあります。 
胃酸分泌抑制薬は、胃を刺激する胃酸の分泌を強力に抑える薬剤です。

胃粘膜保護薬には、胃粘液の分泌促進と、血流の改善を促す等の働きをもつ、いわば胃の粘膜を護る薬です。両者の併用により治療効果が高まります。
最近の潰瘍治療薬は非常に効き目があり、ほとんどの潰瘍は手術をしなくても、薬剤を中心とした内科的治療で治ります。

まれですが、出血が多い場合には、内視鏡を用いた止血が行われることもあります。

 

 

胃・十二指腸潰瘍の再発予防のためには・・・

胃酸の中和作用が高いもの、粘膜を保護するもの、潰瘍などの傷の回復を助けてくれる食品や食事を選ぶ必要があります。まず、胃酸の中和作用が高いものとして豆腐が挙げられます。

またジャガイモも消化不良を治す働きがあると言われています。

治癒を助けるタンパクを含む白身の魚もおすすめです。

中でも特に胃腸の潰瘍に良いのはキャベツです。キャベツに含まれるビタミンUが抗潰瘍性を持ち、体内のタンパク質の吸収を良くし、利尿、解毒作用を促します。
新しく形成、損傷された組織を元通りにする働きがあるといわれています。また、ビタミンKにも止血作用と血液中のカルシウムイオンを増やす働きがあると言われています。

 

十二指腸潰瘍になった時の食事には、胃の運動や胃の分泌を促進させないためにも、香辛料や酸味の強いもの、多量の肉類、高脂肪食を避けることが大切と言われています。
濃い味付けは粘膜を刺激するので、できるだけ薄味で満足できる食事をしたいものです。

胃・十二指腸潰瘍に良い食べ物は?

①喫煙をしない
喫煙は胃粘膜の防御因子の低下や血行障害を引き起こし、更にはがんなどの疾患を誘発する原因にもなります。

②過度の飲酒はしない
アルコールによる胃粘膜への刺激は相当なものです。牛乳やチーズなどの乳製品で胃をガードしてからの適度な飲酒を心がけて下さい。

③毎日規則的に食事を取る
食事を摂らないと胃腸の運動に変化が起こり、胃酸の刺激を受けやすくなったり、胃酸が出過ぎたりします。きちんとした食生活につとめましょう。

④刺激物を避ける
コーヒー、お茶などカフェインを多く含む飲み物には、胃粘膜を刺激する働きがあります。とくに空腹時には控えた方がいいようです。

⑤毎日7~8時間の睡眠を心がける
十分な睡眠時間の確保は胃炎の再発防止にかかせません。睡眠不足が続くと夜間に胃酸の分泌が促されるため、胃の粘膜に悪影響を与えます。睡眠不足自体がストレスの原因にもなります。

⑥運動を定期的に行う
運動することで血行が促進され、消化管の機能が活発になります。またストレスの発散にも有効です。

⑦ストレスの発散を心がける
休養や運動を含め、ゆとりあるライフスタイルを楽しむことも必要です。